ひどく遠回しな家族からの電話。
ここ数日、兄と父からやたらと電話がかかってくる。どちらもたいした要件ではないのだが、そして、ないのにも関わらず昼夜問わず電話をかけてくる。緊急時以外はメールで連絡をよこせと伝えてもなお電話がかかってくる。無職で時間があるからいつでもでられると思っているのかもしれないが、それなりに他の物事に時間を拘束されていることもあるので、すべての電話に出るのは困難だ。
いざ電話に出てみると、要件までが長い。さして気にもしていないウェブサイトの更新についてだったり、近況の報告であったりと本題に入るまでだいたい10分くらいはかかる。昔からそうだったのか、それとも最近そう変わったのか、あるいは自分に対しては単刀直入に本題に入りずらいのかはわからない。そんなこんなで、電話に出るのが最近はひどくめんどうに感じている。
兄からの直近の電話では、ウェブサイトのレイアウトと文章が一部変更ができなくて困っているというところから入ったが、非常に細かい修正でわざわざ電話でかけるまでもない副題であることにはすぐに気がついた。なんでも、兄は整骨院のウェブサイトのQ&Aページに、「Q:外国人でも診療可能ですか?, A:お断りしています。」や「Q:ベビーカーは持ち込み可能ですか? A:お断りしています。」を追加したいというのだ。
昨今の差別主義や弱者への冷遇を許さない社会的風潮から考えれば、そのような文言を追加することはデメリットでしかないことは容易に想像がつく。あえてそのことは口に出さず追加修正は可能だから、やっておくと伝えると、「いやでもやっぱり世間的にまずいかな」と言い始めた。変えたいのか変えたくないのかだっちなのかと。
そこからは想像の通り、外国人と妊婦によって起こった最近の問題についてのぐちが始まった。要するにここがゴールだ。兄は一人で個人事業主としてやりくりしていて気軽に発散する相手がいないので、私がたまのぐちくらいは聞いてもいいが、まあそこまでが長い。これまで電話で話すのは仕事関連がほとんどで、ほぼ例外なく主題から話しているのに慣れきってしまっている。それが身についてしまっているせいか、最初の数分の副題が非常にまどろっこしく感じる。家族間のようないわゆる親しい間柄では、これくらいの前説があるのが普通なのだろうか。
ちなみに、外国人トラブルの相手は黒人だったらしい。問題の詳細は省くが、非常に頭にきたので英語でなんと言えば相手に心的ダメージを与えられるかをわざわざGoogleで調べて(差別的Nワード)、後日、面と向かって言い放ったらしい。
兄の想像していた以上に相手を怒らせて不快な気分にさせることができたそうだ。胸ぐらのつかみ合いの喧嘩に発展しそうになったとのこと。兄は全く英語が話せないのでよく通じたなと思い、それを再現してもらったところ、極めて流暢な発音をしていて感心した。人を恨む心というか、復讐心みたいなものは勉学のモチベーションになりうるということを再確認した。
結局、それまで起きていた問題は解決したらしい。ときに文化の壁を超えるためには、強引な交渉も必要ということであろうか。
父からの電話も同様に、ウェブサイトの更新の依頼からはじまる。父は会社員を定年退職で辞めて、個人事業主として不動産屋をしている。そのウェブサイトもいちおう私が管理している。内容を更新したいというのだが、そもそもウェブサイトなんてほとんど活用していないし閲覧数はほぼゼロなのだから気にする必要などない。それでも更新がしたいそうだ。
結局、だらだらと細かい修正の話が続いてからでてきたのはただの自慢話だった。新規に新しいビジネスを獲得したのでそれを会社の実績ページに追加したいとのこと。実績については過去に何度も説明を受けていて、売上がいくらで儲かっている云々の話は耳にタコができるくらい聞かされた。今回はさらにもう一件決まって、その報告のようだった。
やっておくと適当に流してそれで終わりかと思ったら、さらにもう一つ主題が残されていた。
「まだプー太郎をやっているなら、俺の仕事の手伝いをしないか」と誘われた。父が自分に任せたい仕事はいわゆる飛び込み営業のようだった。どこかの会社に所属しての飛び込み営業は、厳しいノルマが待っていそうで怖くてやってみたいとは思わない。ただ、なあなあな家族間での飛び込み営業ならゆるそうだし案外面白いのかもしれないとも思った。得体のしれないもの同士でいきなり数千万円以上の取引がありうる話をするのを想像するとなんだか少しわくわくする。
とは言っても結局面倒なので断った。それに忙しくて手が回らなくなってきたとは言っていたものの、実際はなんとかなるレベルだろう。少し変わっているとはいえ、やはり私のことを心配してるのかもしれない。
そんなこんなで電話は話が長いし、できればメールがいいのだがなんとかならないものだろうか。いっそ家族のLineグループを作ってみたら何か変わるかもしれないな。