日記

まぜそば屋のおやじの行動で示す接客術。

昨日、台湾まぜそばなるものを食べてきた。名古屋で生まれたのに台湾の名前を背負っている台湾まぜそばは、東海地方にはそれなりにチェーン店があり、人気もそれなりにあるようだ。まぜそばを食べるのは今回が始めてだ。

これで1,130円なのでまずまず高い。もちろんもっと安いメニューもあったのだが、せっかくなので全部のせを頼んでみた。にんにく、ニラ、ネギと息の臭くなりそうな構成だ。辛さの調整もできるのだが、初めてはやはり店のスタンダードを体験すべきだと思い、特に変更を加えなかった。味は想像通りでジャンキーだった。刺激が強くて濃い。量も多めで、やはりターゲットは若年の男性という印象だ。

麺はうどんくらいに太く、粘度が高くドロッとしたスープに絡み付きすぎないようにできているようだ。細麺だと下に溜まっているスープを根こそぎ巻き上げてしょっぱぎる味になることだろう。それでもまだ味はかなり濃い目だった。団体で来ている部活帰りと思しき高校生はしっかりと大盛りでたいらげていた。ただ、一人できている女性客も何人かいた。しゃれっけのないラーメン屋に女性客一人というのは珍しいことではもうなくなってきているのかもしれない。

隣の席の男性は40代くらいで、私よりもあとから来店したが私より早く食べ終えかけていた。麺がほとんどなくなったときに、店員を呼び、カウンターのヘリについてるメニューを指差して追加注文をしていた。追い飯+卵黄キムチトッピング110円だったと思う。私もこの日初めて知ったのだが、追い飯というのは、麺を食べ終わったあとのラーメンどんぶりに白米を入れて混ぜて食べることを指す。店内の目が行きやすいところで、しきりに追い飯を推奨していることから、客の満足度も高く、体験してもらいたいサービスのようだ。白米を混ぜるだけなので費用もほとんどかからないことだろう。なお、白米だけの追い飯は無料で食べることができる。

注文後すぐに、隣の男性客のどんぶりは厨房に運ばれ、少量のごはんがよそわれて、男性の手元に帰ってきた。トッピングの卵黄とキムチが来なかったので別で届けられるかと思って様子を伺っていたが、一向に運ばれてこず、準備されているようにも見えなかった。どうやら注文が正しく通っていないようだ。隣の客の注文を受けたのは、研修中とマークの付いた10代後半に見える男性だった。彼が正しく注文を処理しなかったのだろう。無料ということもあり追い飯を要求する客は多いが、有料トッピングはイレギュラーのようで、無料のめしのみと混同していたようだ。お金を受けっているんだから間違えようがないと思うかもしれないが、緊張しっぱなしの若手のバイトのキャパシティーを超えてしまうのには十分だ。

追い飯を途中までかっこんでいた隣の男性客もトッピングが来ないのに腹を立てているようだったが、しばらくは特に何も言わなかった。もうほとんど全てのごはんを食べ終わってしまうかというところで、「すいません、まだトッピングこないんだけど」と不機嫌そうに声を発した。

その声は、厨房内の真ん中で、注文と調理の両方を取り仕切っている年配の男性にも届いた。名札には店長と書いてあった。すぐにその店長は注文の管理をしている紙を確認していた。そこには、卵黄キムチトッピングと書かれていなかったようで、注文を受けた若手バイトに書かなきゃだめだと指導したあとすぐに、注文漏れの客のところに向かってきた。今すぐお持ちしますのでどんぶりよろしいですかと聞き、もう一度どんぶりを受け取った。

驚くことに謝罪の言葉はなかった。無骨スタイルのラーメン屋でも注文の処理ミスならなにか一言あるのかと思ったが特に何もなかった。お客様は神様主義のサービス業が多い中、これは珍しい。

どんぶりを持った店長は炊飯器に向かい先程より多い、しゃもじ山盛り一杯分のご飯をよそい、それにキムチと卵黄を乗せて運んできた。ご飯少なくなったので追加しておきましたとさらっと伝えどんぶりを返した。漏れていたのはキムチと卵黄だけであったので、追加分のごはんはサービスのようだ。隣の客もご飯の追加は嬉しいサプライズのようで、あぁどうもと言ってどんぶりを受け取りまた元気にかっこんでいた。

客質や状況によって接客の答えは変わる。流石になにか一言すみませんくらいがあっても良さそうなケースではあるが、店長はうまく注文漏れをさばいていたように見える。謝罪のサービスでご飯を追加したというのが本音であろうが、それもあえて言わずに出したあたりが、良い意味で驚きとインパクトを与えることに成功し、注文漏れという失敗を帳消しにさせるような効果があった、と私はその時感じた。でもまあ今考えると、そもそも追い飯だけなら誰に対してでも無料で、そのサービスは特定の客に対しての謝罪にはならないかなとも思えるが、演出に飲まれた。そういった見せ方も評価したい。言葉ではなんとでも言えるので、こういった行動を伴った対処方法は個人的には良いと思える。そして、そんな層がこのラーメン屋には来ていそうなので、限りなく正解に近い対処方法であった。

その後、私も周りの客に習って追い飯を頼んだ。無料分で十分なのでトッピングはしなかった。見習いの若手が処理していたが、ごはんだけのルーチン処理だったので、すぐにごはんをよそい私の席に持ってきてくれた。またまぜまぜして食べた。看板に偽りなしで確かにごはんともよくあった。謝罪飯に比べると随分と少なめだったが、そういうものだろう。

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